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例えば一つの家事をやらなければと思ったときに、「忙しさのメガネ」を通して見てしまうと、その「一つの家事」だけが見えるのではなく、「あれもやらなければ、これもやらなければ」「あれも終わっていない、これも終わっていない」ということまで同時に見えてしまうのです。(p.25)

毎日なぜか忙しい・・・落ち着いたらやろうと思っていることも全然できない・・・そんな思いを抱いている方、多いのではないでしょうか。仕事であれ、家事であれ、やることが山ほどあるからという考えになりがちですが、実は「忙しさのメガネ」を通じて物事を見ているのも原因かもしれません。


著者である水島広子さんは精神科医。お医者さんの視点から「忙しさ」を見つめています。本を読んでいると、どことなく優しさを感じるのはお医者さんならでは。ただ、優しさだけで終わる本ではありません。多忙な生活から脱却するためのヒントが詰まっているので、その中でも心にガツンときた3つをご紹介します!

1.今やらなくてよいこと、まで見えてくる「忙しさのメガネ」
2.終わらないものは終わらない
3.「忙しい病」を予防するための方法




1.今やらなくてよいこと、まで見えてくる「忙しさのメガネ」

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photo credit: Thomas Hawk via photopin cc

「忙しさのメガネ」とはどういうメガネかというと、「あれもやらなければ、これもやらなければ」「あれも終わっていない、これも終わっていない」という色をつけて物事を見るメガネだと考えてみてください。(p.25)

 私達は何かしようとするとき、本来ならそのことだけに集中します。人間は1度にひとつのことしか考えられないからです。しかし、あまりにも忙しいとき、他にもやること満載のとき、ありますよね?そんな時は要注意です。「忙しさのメガネ」によって、今やらなくても良いことまで見えてくるからです。

このメガネにおける弊害は”忙しさを何倍にも感じてしまう”こと。数分で済む雑用があったとしても、そんなことしている余裕は無い!と感じて結局先延ばしにしてしまいます。

確かに、自身の経験を振り返ってみても、忙しい時は雑用などおろそかになりがち。切れていたシャンプーを買うヒマがなくて何回ボディソープで頭を洗ったことか・・・しかし、実際は自分自身の考え方が忙しさを増幅させていた、と言えます。やろうと思えば数分で済むことも、忙しさのあまり「それどころではない」と思ってしまう。1度に1つのことに集中すれば良いのに、同時にいくつも見えてしまうことが、「忙しさのメガネ」の恐ろしさです。


2.終わらないものは終わらない


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 photo credit: I like via photopin cc   

もちろん、今に集中しようとしても、例えば、やり残したことなどがどうしても気になってしまう、という人はいると思います。(中略)結果として、「忙しさのメガネ」の色が濃くなってしまい、「今」への集中を妨げることになります。(p.66) 

やり残しが気になる・・・これは仕事でも永遠を感じさせるほどのテーマです。あれをやっておかないと、期限までに間に合わないかも・・・なんて考えだしたら最後、「今」への集中力は一気に低下します。

しかし、著者である水島さんは医者としての視点から、このように指摘します。

人間というのは、あくまでも遺伝情報を持った生物です。つまり、限界があるのです。「努力すれば何でも達成できる」というのは全くの嘘です。特にそれが時間軸を伴ったものである場合、どれほど集中しても、終わらないことは終わりません。(p.67)

人間としての限界を見定めた上で、「やり残し」については現実を受け入れる必要があります。終わらないものは終わらないぞと。

「今日はここまで終えるべき」というのは、あくまでも自分が勝手に決めたこと。そのことと、生物としての人間の限界が合わないことには何の不思議もありません。ですから、「やり残し」を問題にすること自体がおかしいのです。(p.67)

 もちろん、やるべきことが終わっていないことも事実。ただ、一定の限界がある以上、あとは自身が「どう捉えるか」の問題になります。やり残しがあるとき、今日はここまでできた!と見るか、まだこんなにある!と見るか。私達が目指したいのは前者となります。本書の言葉を借りるならば、
「今日もベストを尽くした。でももう休む時間だ」(p.67)
どんなときも、覚えておきたい言葉です。


3.「忙しい病」を予防するための方法 


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photo credit: nromagna via photopin cc

「忙しさのメガネ」も、その弊害もわかった。ではいったい、どうすりゃいいんだ?という問いに対しても、本書は解答を用意しています。意外にも、考え方の偏りが主原因であるこの問題に対し、「忙しそうな外見」をやめることが提案されます。

実は、脱・「忙しい病」のポイントの一つが、「忙しそうな外見にしない」ということです。これは、身なりから、態度から、食事や運動の習慣まで、すべてに及びます。(p.164)

忙しい時には外見もおろそかになりがちです。なんてったって忙しいから。髪はボサボサ、食事はコンビニ弁当で、何をするにもバタバタしているイメージです。しかし、それでは周囲だけでなく、自分自身も「忙しい!」という雰囲気を受け取り、ますます「忙しい感」が増していきます。

そうではなく、忙しい中でも時間を区切り、メリハリをつけることが重要なのです。忙しいから食べながら仕事、ではなく、例え短い時間でも区切りを入れて食事の時間を取る。その時間だけは、仕事の忙しさから頭を切り替えて食事を楽しむ、というような具合です。


また、いつもと異なる環境での忙しさに対しては、こんなアドバイスも。

例えば、初めての子供が産まれたとき。あるいは、小さな子どもの育児と仕事との両立、介護と仕事との両立、などというとき。こんなときには、「とにかく毎日生き延びる」というところに限界を設定したほうがよいでしょう。それ以外の課題は一切自分に求めないのです。(p.185)

向上心溢れる人にとっては、日々の生活に加え、自身のスキルアップなどを望みます。しかし、他にもやることがあるとき、あれもこれもでは限界を超えてしまいます。置かれた状況を理解した上で、限界を低く設定して大きな負荷をかけない。お医者さんらしい心遣いですね。

このように、忙しい現実を受け入れた上で、「時間をしっかりと区切ること」「限界を低く設定すること」が有効です。


まとめ

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photo credit: Linh H. Nguyen via photopin cc

本書で特筆すべきは、人間には限界があるとはっきり述べている点です。よくある自己啓発本の「努力すれば何でもできる」論が排除され、現実を認めた上でこうするといいね、と優しく教えてくれるようなイメージ。読んでいるとホッとします。

物の見方に対する偏りを排除し、「忙しさのメガネ」を外すこと。今は何をする時間なのか考え、今に集中すること。ちょっと実践してみようかな、そう思える良書です。時間を惜しむ全ての人にオススメします。


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